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今夜、どこで寝る

旅と踊りと酒

セックスさせていただいた後に毎回号泣していた話

その昔、私にはなかなかヤらせてくれない彼女がいた。
と言っても、セックスしていなかったわけではない。
彼女は私を抱くが、私には抱かせてくれない。
つまり、彼女はタチしかせず、ネコになることを徹底的に拒んだ。
「抱かれるのはちょっと…」と濁して、私を抱いた。

レズには不思議な風習がある。
それは付き合う前にどのようなセックスをするか確認することである。
普通に考えたら、つまりそれが男女のカップルであれば、付き合う前にどんなセックスをするかなんて確認しないだろう。男が入れて女が入れられる、当たり前のことで確認する必要もない。
しかしレズはどちらにもなれる。けれど結構きっぱり、私はタチですとかネコですとか、自分で決めている人も多い。
そんなわけで私は付き合う前から「私バリタチだから」と告げられていた。
ふーんと思った。
正直、そんなものはいざベッドにもつれ込めばどうとでも変わるというのが自分の経験上の感想だったからだ。その日の気分やテンションやノリで。

だがいざ付き合い始めると、彼女は本当に全然ヤらせてはくれなかった。
体を触ることさえあまりいい顔をしなかった。
私が何かをしようとすると、うまいこと丸め込まれた。


ある夜、自宅で二人で飲んでいて、彼女が「あのさ、本当にしたいと思う?私を抱きたいの?」とポツリと言った。
私はかなり食い気味に返事をしたが、その後はそれ以上話が展開していかなかった。
そして寝るか、という雰囲気になり、寝巻きに着替えて布団に入ると、彼女が何かもじもじしている。彼女に背を向けて寝るのが常の私の背中に顔を押し付け、後ろから腕を回して、私の手に指をそっと絡ませてきた。
雰囲気的にはヤりたいのかな?と思ったけど、どうも様子がいつもと違う。何かボソボソと呟いているのが聞こえた。
彼女の方に向き直り、髪を撫でながらその「何か」をよく聞いてみると、「いいよ」と言っているのだった。
いいよとは。いいよ。ふむ。
その言葉の意味を理解した瞬間、私の中の童貞マインドが急激に爆発した。
それはもう盛大に爆発し、胸は高鳴り、手は震え、どどどどど童貞ちゃうわ!!と心の中で叫んだ。
童貞ではなかったが、いざしてもいいよと言われると、死ぬほど緊張するものだ。それが、今まで何度アタックしてもOKしてくれなかった、本当にしたかった人なんだから、なおさらだった。
いざ事に及んでみると、彼女はやはり少し嫌なんだなーというのがわかりやすく伝わってきた。それでも彼女の体の隅々まで触り、気持ち良さそうな顔をされ、彼女に抱きつかれながら耳元で鳴かれるのは、脳が溶けそうになるくらい気持ち良かった。
一通りのことが終わる頃、私は彼女を抱きしめながら泣いていた。号泣した。
今まで私は彼女とセックスしていると思っていたけど、違ったんだ、私がしたかったのはこれだったんだ。ずっと我慢していたけど、今それが叶ったんだと。
彼女は常々「男女のセックスはちんことまんこで本当の意味で繋がれるけど、レズは指を入れてるだけだから繋がってるとは言えない」と言っていたが、私は、この時絶対にそんなことはないと強く思った。そんなことない。
私は本当の意味で彼女を抱いたし、繋がったと思って、吐くほど泣いた。
彼女を抱いたはずなのに、彼女に抱かれながら。
今まで満たされなかったものが満たされていくのを感じていた。

 

その後も彼女は本当に時々だけど、してもいいよと言って、私は彼女を抱き、毎回号泣した。
それは、決して自分の望んだ時に彼女を抱けるわけではないことによる強い寂しさと、彼女を抱けた喜びと、繋がっているという確信をぜんぶないまぜにした涙だった。
私も彼女もここにいる、とか、精神も肉体も今この瞬間共有している、とか、うまく表せない感情で、涙を止められなかった。


例えばどうでもいい人と何らかの都合で床を共にするとき、何だか心が伴わなくて抱かれたくないことがある。そういうときは自分から責めて、自分には触らせず、そのまま寝たりする。
私にとって抱かれる、受け身になることは、心を開いている人にしかしたくない行為で、同じように抱かせてくれることが、相手の心が開いたと感じるサインだったのかもしれない。
あの夜、彼女を抱いて慟哭したあの時、こみ上げてきた気持ちになんという名前をつければいいか、今もわからないままです。
おわり。