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今夜、どこで寝る

旅と踊りと酒

ずっと嫌いでいてほしい

忘れもしない成人式の日。

着物を着た写真を事前に撮っていたので、成人式はドレスで参加した。
イギリス滞在時に買ったVivienne Westwoodの赤いドレスに黒いファーの襟巻きで、髪は美容室でアップにして巻いてもらった。アクセサリーもVWで揃えた。

中学や高校の同級生たちがちらほら見受けられ、私は高校で同じクラスだった友人と立ち話をしていた。

出身中学ごとに集合写真を撮るので集まってください…とアナウンスが流れ、人が一斉にステージの方へ移動していく。私の中学の番だった。
気は重いけど一瞬のことだと思い、列に並び、写真を撮られた。

その場から出来るだけ早く立ち去ろうとしたのに、運悪く同級生に声をかけられてしまった。
水色やピンクの振袖を着て白いファーを巻いた彼女たちは、あの頃は、本当にごめんね、一緒に写真を撮ろうよと言った。記念だから、と。
私は、なんでそんなこと言うの?私のこと嫌いでしょ。そういうのやめなよ。と言って、小走りで離れた。
やめなよ、と言った瞬間の面食らった顔が今でも忘れられない。

 

私は中学2年生から中学校卒業までの間、スクールカーストの最下層にいた。
それまで二人で行動していた女の子に気持ち悪いと言われ、別のグループに入ると告げられて、孤立したからです。

その頃の私は、何が恋で何が性欲で、自分の性的指向が何なのかなんてまるでわかっていなかった。
ただ、その子と一緒にいたいとか、その子に彼氏ができたら嫌だな、とか、私より仲の良い子がいると傷つく、とかそんな気持ちだった。
今なら簡単に名前をつけられるのに、それを友情だと思い込んでいた。

ローティーンの女の子たちが当たり前にする手をつなぐことや、ふざけて胸やお尻を触ったり、ほっぺにキスをするなんてことが、私にはとてもじゃないけどお遊びだと思えなかった。
それを許してもらえる自分は、彼女にとって特別な存在なんだと思い込んでしまった。
体を触ったり触られたりしているうちに、ある時その子に、あなたの触り方はなんだかいやらしくて気持ちが悪い、と言われた。
今考えてみたら、その接触には性欲が混りこんでいた。
気持ち悪くて当然だと思う。
若かったことや無知であったことは言い訳にならないと思うし、はっきり書きたい、私は彼女に性的暴行をしてしまったのだと思う。性的暴行の加害者だった、と今は思う。
そんなことがあってしばらくして、前述の通り私は孤立した。

いじめられていた、というのは少し違うと思う。
存在がないかのように振舞われ、最小限の会話しかせず、集団で行動すべき時も一人で過ごした。
最初の一週間は辛かったけど、そこで腹をくくってしまったのかもしれない。
惨めだと思うから惨めなんだ、一人でも堂々と過ごそう、と思って卒業まで耐えた。
悪いのは自分だ、とどこかで思っていたから、彼女たちにつっかかることもしなかった。

 

自分は性的暴行の加害者だった、という事実に気がついたのは皮肉にも被害者になった時だった。
当時付き合っていた彼女が、夜中、普通に寝ている私のパンツを下ろして無理やり交渉を試みたことがあった。
びっくりしたのと夢うつつで、指を突っ込まれた瞬間に勢いよく起き上がって思わず彼女の頬に噛み付いてしまった。かなり強めに。
彼女曰く、そのような行為に及んだ理由としては、先に眠られて寂しかった、その日1日イライラしていたのでセックスしたかった、寝ていてもきもちいかもしれないからしてみた、とのことだった。
最近私たちなんかズレてるよ、と吐き捨てるように言って私に背を向ける彼女に、私はなぜかごめんねと謝ってしまった。ズブズブに依存しあっていた。
けれど頭の中のもう一人の私は、これはDVでありレイプだし、こんなことはあってはならない、今すぐにでも家に帰ったほうがいいと警告の鐘を鳴らしまくっていた。

その日から数日、夢で中学の時の出来事が再生されるようになった。
手をつなぐ彼女と私、ふざけて胸を触られて触り返したこと、ほっぺにキスをするごっこあそびが流行った帰り道の夕陽。
最後は「なんか気持ち悪い」という彼女の歪んだ笑顔で目が覚めた。
ああ、この前私がされたことは、程度の差はあれど、私が過去にしてしまったことなんだ。
そしてそれはこんなにも不快で、心を傷つけるものなんだな。
自覚があろうがなかろうが、許されるものではない。
二度と会えないし謝ったりすることは余計に不快だと思うので、何もできないけど、ただただ自分を恥じた。

私に写真を撮ろうよ、といってきたグループの子たちは、全員その事実を知っていると思う。
そしておそらく私のことを、さぞ気持ち悪いと思っただろう。嫌いだっただろう。
なんで今更、私たちはもう友達、みたいな顔して近づいてくるの?
私は、彼女たちに、私のことをずっとずっと嫌いでいてほしい。
ずっと、許しがたい不快な存在だと、思っていてほしい。
軽々しく許したり、受け入れたり、友達になれるかもしれないような雰囲気にならないでほしい。
仲良くなれるかもしれない、と期待してしまうのも、それに裏切られるのももう嫌だから。
二度と交わらないという優しさも世の中にはあると思う。
私は私で罪を悔いて生きていくし、彼女らは彼女らでそういう気持ち悪い女がいたということをどこかで覚えていてくれればそれでいい。
彼女らが私を嫌っているという事実は、私の絶望でもあり、二度と繰り返してはいけないという未来への希望でもあるのだから。

今の義務教育の保健体育は、性のことについて学ぶとき、LGBTの話も出てくるのかな。
願わくば、私みたいな人がこれ以上現れないためにも、様々なSOGIに対応する性教育が実地されていてほしい。
異性であれ同性であれ、他人の体を軽々しく触ってはいけないとか、そういう根本の話なはずなんだけど、やっぱりそこに性欲があるかないかなんて、その時はわからなかったから。
これが恋かもしれないともっと早く気付かせてほしかった。

自分の体も他人の体も、大切に生きていきたい。
おわり。