今夜、どこで寝る

旅と踊りと酒

song for

とても嬉しいことがあった。

私の働くお店にはダンサーとは別に、接客担当のホステスさんがいる。
業務内容が違うのであんまり関わることはなく、普段は挨拶程度しかしない。
なので名前を知らない子がいたり、どこに住んでいるかもお互いに知らない。
けれど今日、そのうちの一人がとても酔っ払って私に話しかけてきた。
「まなつちゃんの踊りが一番好き、いつもお客さんにあの子にチップ入れてって言ってる!」
おはようございます、しか交わしたことのないその女の子は、お客さんと一緒に、毎日私が踊るのを見ている。
私は、常連さんに「○○さんが一番目が肥えてますよ、たくさんダンサー見てるからね。」と言いながらも、一番目が肥えているのはホステスさんだと思っている。
本来、彼女たちにショーをじっと見る義務はない。
毎日見てれば飽きもするだろうし、ドリンクを作ったり片付けをしたりやることがたくさんあるからだ。
だから、彼女らがショータイムをしっかり見ているわけではないだろうと私は思っていた。
けれど彼女は、あの時の衣装が可愛かった、あの曲で踊っているのが好きだ、とものすごく細かな私のショーの構成を覚えていた。

「世界中でこんなにたくさんの人がいるのに」あなたと出会って恋に落ちて…というHYの曲がうっかり頭に流れてきた。
世界中にクソかっこいいポールダンサーが山ほどいて、そんな中で私が一番好きと言ってもらえることが、何よりも嬉しい。
万人には好かれまい、と開き直って踊っている。自分のスタイルを貫きたい。それでも好きだと言ってくれる人がいるならば、私の全てを賭けて踊る。
たくさんの中から選んでくれて、見つけてくれてありがとう、と思った。
こういう気持ちを忘れないでいたい。


何もかもがてんこ盛りのお得な定食より、こだわりの一品だけのお店をやってる気分です。
おわり。