今日の記事は自分への戒めも兼ねております。
「私なんてダメだ」
「どうせ自分は捨てられる」
「私には何もない」
「みんなに嫌われてる気がする」
等々と親しい友人・恋人に言われたらどうしますか?
以前の私はそれを全力で否定し、褒めそやし、心の底から彼・彼女らを励ましていました。
「そんなことないよ」と。
みんなあなたのことを慕っているし、あなたにはこんな風ないいところがある。
あなたのこういう能力が素晴らしいし、あなたのこういう行動は素敵だ。
何よりあなたがあなたであることだけで、素晴らしいことでしょ。
あなたは世界に一人しかいないんだから。それだけで尊いんだから。
昔々、私にも自己肯定感がどん底の時期がありました。
そして友人や恋人に、
「私には何もない」
「私は生きてる価値がない」
「みんなに嫌われてる気がする」
「私なんてダメだ」
と言い散らかしていました。
「そんなことないよ」と言ってもらいたくて。
そうするとちょっとはマシな気分になれたから。
誰かに認めてもらえたような気持ちになれたから。
「そんなことないよ」
は、一時的な効力だけ高くて継続的には効かない麻薬みたいなものです。
心の底から自己嫌悪して愚痴を吐き散らしている時に言われると、気持ちが少し落ち着く。
けれどそれも長くは続きません。また言ってほしくなる。
何度でも「そんなことないよ」って言ってもらえないと、気が済まなくなる。
「そんなことないよ」って言ってもらいたくて、人を呼んだり話を聞いてもらうようになる。
「そんなことないよ」と言われた時の、たった一瞬の安らぎのために、延々と自己嫌悪を繰り返してしまうようになったら、かなり危ない状態です。
かさぶたをはがすのが気持ちいいからワザと転んで怪我をする、とかそういう状態に似ています。
絆創膏で治る程度の怪我ならいいけど、ワザと転ぶのにも技術がいるし、毎回かすり傷で済むとは思えません。
自己嫌悪が積み重なると、自分の手当てではどうにもならない大怪我につながります。
その先に行ってしまった人は、他人からの「そんなことないよ」では、怪我を治せません。
彼・彼女らのほんの小さな擦り傷、ありとあらゆる心の怪我を治せるものがあるとしたら、それは彼ら自身が持っている治癒力に他なりません。
自分がどこにどんなケガをしているか認識し、怪我の周りが汚れていたらよく洗って怪我の状態を確認して、部屋のどこかにあるオロナインを塗って絆創膏をつける。
もしそれすらも出来ない重篤な状態であれば、速やかに専門の病院へ行く。
友人知人に「痛いの痛いの飛んでけ〜!」と言ってもらっている場合ではありません。
多分これらは心理学の領域でいう「認知の歪み」のことなのかな、と思っています。
「そんなことないよ」と言ってもらいたがる人は、自分がなぜその愚痴を言っているのか、何が気にくわないのか、自分がどんな状況にあるのか、見えていないか見ようとしていない人が多いように感じます。
そして「そんなことないよ」と、彼らにその場しのぎのおまじないをしていた私は、彼らの傷口をいたずらに広げていただけに過ぎないな、と思っています。
だから私はもう「そんなことないよ」と言いません。
もし親しい友人に、
「私なんてダメだ」
「どうせ自分は捨てられる」
「私には何もない」
「みんなに嫌われてる気がする」
と言われたら、まず一通り話を全部聞きます。
そして、なぜそう思うのか、今そういう気分なのか、そう思うのにはどういう理由や出来事があったのか聞くようにしています。
ひとによっては話したいだけの人もいるし、何か言ってほしい人だっている。
「そんなことないよ」は、言う方にとっても言われる方にとっても、考える機会を失ってしまうフレーズに過ぎないのではないか、と思います。
何より世界は一つではない。
街や国の話だけでなく、様々なコミュニティや人種、学校、宗教で、一つの価値観があるところでは全く別のものになってしまう。
もし心の底から「私には何もない」と思ってしまったら、そのことを思い出す。
何も持たず生まれてきて、何も持って行けず死んでいく私たちが、今持っているすべてのものは借り物に過ぎません。
私たちはもともと何も持っていないし、今も、本当は何も持っていません。
だから「私には何もない」はある意味その通りで、それを不幸に思ったり辛く感じることはありません。
私たちの肉体ですら死後の世界には持っていけない。現世で綺麗に焼かれます。
何もないことはもはや美しいし、それなのになにも持っていない私の周りには素晴らしい世界や人々があふれている。一生かけても読み尽くせない本や観尽くせない演劇、会えない人、行けない場所がある。
私には何にもないのに、私の周りには、なんでもある。マジすごい。
だから今後「私には何もない」とか「私はダメだ」って言われたら、そうなんだ!マジすごいじゃんそれ!としか言えません。
自分に何もなくても周りには素晴らしいものが溢れかえっていて、飯が食えて、天井のあるところで眠れるって、超ヤバいですよ。
「そんなことないよ」って言ったら嘘になるので言えません。
「私はダメだ」も、ダメかどうか決めるのは私ではなくその人自身なので、何も言いようがありません。
ダメだと思ってるのが嫌なら、ダメだと思うのをやめたらいいよ、と言うようにします。
お互い何も持ってないけど、超恵まれてると思うよ。
空気のある星に生まれた時点でマジ感謝でしょ。
おわり。