今夜、どこで寝る

旅と踊りと酒

説明しない

文章を書く時に気をつけていることがある。
それはあまり「説明しない」ことです。

 

職業柄、普段から人にいろんなことを聞かれることが多い。
なんでポールダンサーやってるの?とか、どうしてこのお店で働いてるの?とか。
家族のこととか恋人のこととかどうしてそんな人生を送っていてどこに旅行していて今までどんなところに住んでいてああもう何も言いたくない。
質問されて、説明をするというのは、とても疲れる。
なぜなら今までに何百回と同じことを聞かれているからです。


そして、その何百回も聞かれているようなことを聞いてしまう人は、はっきり言って想像力がない。微塵もない。
何百回も聞かれているだろうことを想像できず、脊髄反射みたいに頭に浮かんだことを口に出してしまうことがあるのはわかる。お酒を飲んでいたら特に。
わかるけど、本当に嫌だ。


仕事でそういう脊髄反射の応酬を繰り返していると、プライベートではできる限り丁寧に人と接していきたいと思う。
つまり、相手の立場を想像して、どのような質問が最適であるか。
また、質問しない方がいい場合もあるということ。
どうでもいい人と休日に会わないし、大切な人にしか時間を割かない。
丁寧に接して仲良くしたいと思う人としか、お付き合いをしない。

こんな風に現実での対人関係に公私ともに全力を注いでいると、書いている文章がどんどん抽象的になっていくきがする。
そしてそれでいいのだと思う。
もちろん必要がある時は説明するけど、受け取り方を委ねたい時やそれについて各々思案してほしいと思う時は極力余計な説明を省く。
自分がそんな文章を書き出したら多分、調子が悪いときです。
頭がおかしいときです。
だから起こったことをそのまま書いてそれが読者にどう受け取られるかわからない感じの小説や随筆を書くのは、好きだなと思った。
正解がないの。もともと、答えなんてありません。だから説明もない。
国語のテストに出たとしても、選択肢ぜんぶ正解。

裸で2月の奄美大島の海に入った主人公が涙を流したのはなぜですか?
次の選択肢から答えなさい。
A.水が冷たかったから
B.恋していた人が実は子持ちの人妻だったから
C.東京の自宅に帰る交通費がないから
D.子持ちの人妻を養うことのできない自分が不甲斐ないから
どれだっていいんだよ〜
っていうか全部なんじゃないの?


人の気持ちは誰でも想像できるし、正解はありません。
あなたの気持ちも私にはわからない。
だからちゃんと口で言ってね。
それか手紙をください。
おわり