今夜、どこで寝る

旅と踊りと酒

服を着て泳ぐ

強引な人が好きなのかもしれない。

というのは間違いで、本当は私が私を投げ出しても「それでもいいよ」と言ってくれる都合の良い人のことを好きになるのだと思う。このまま君を連れて行くよ、と車を飛ばして海へ連れてってくれるような人が前は好きでした。凡庸な女だなあ。
そういう人のことを、つまりもう逃げ出したいと思っている時に強引なフリをしてこちらの望みを察しちゃって海に連れてってくれるような「SはサディストのSではなくサービスのS」タイプの人を、心底好きになるけど不思議と恋には落ちない。なぜか。私にもその気質があるから。

だから、あなたが泥みたいな顔でもう無理だって言ったら即海に連れて行きます。
会社なんか休んじゃえよ、とあなた自身もあなたに言わない無責任なことを言いまくって、自分は運転してあなたの好きな音楽をかけてもいいよってFMトランスミッターを渡す。
そういうのが人には必要だよ。そういうのしかいらないよ。
デスクに座りっぱなしの仕事なんて痔になるよ。辞めちゃいなよ。
たとえその言葉が一時しのぎに過ぎず、何の解決にもならない上に今すぐ会社を辞めることもできない、日常は明日も続くしあなたは明日会社で怒られるとしても、そういう言葉を私はかける。
他の誰かが言う前に。

いつかの夏の思い出として忘れないでいてくれたら嬉しい。
きっと私は忘れられちゃうのが一番寂しいんだな。
浜辺であんまり美味しくない焼きそばでも食べよう。肉のほとんど入ってないやつ。