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旅と踊りと酒

エロ!グロ!理不尽!至高のダークファンタジー「五日物語」ネタバレあり

チラシを見つけた時から「これを見ずして死ねない」と思ったほどドンピシャで心に響いた映画、五日物語を見てきました。

itsuka-monogatari.jp

以下は壮大なネタバレであり私からこの物語に登場する女たちへの讃歌ですので、何も内容を知らずに見たい方はとにかく映画館へ行ってください。

 

 

 

「パンズラビリンス」

「ローズ・イン・タイドランド」

「アリス」

「ブランカニエベス」

辺りが好きな人なら身悶えるほど突き刺さる映像美。たぎる暴力と血とエロス。むき出しの欲望とそれに踊らされる女たち。あ、男もか。

 

物語は三つの国を舞台に少しずつストーリーが進んでいきます。

サルマハエック演じる不妊の女王様は子供が欲しくて怪しげな魔術師に相談し、海の怪物の心臓を食べたら子供授かるよ!というアドバイスに従い夫である王様に怪物退治をさせます。
海って言っても…なんかこう…渓谷?洞窟?川?みたいな怪しげな雰囲気の水の中へそろそろと進んで行く王様…濁った水の中に白い竜のような怪物を見つける王様…そして死。

魔術師は「生と死は対」と告げており、怪物を殺すことは王の命と引き換えであると最初から示唆されていたのかな。
王は死に、女王様は怪物の心臓を手に入れそれを貪り食います。
調理は生娘の下女が行いました。
女王様は無事にご懐妊、たった1日で玉の様なお子を出産し、なぜか調理した下女までも子供を授かってしまいましたとさ。

このくだりまでですら相当に悶える要素がてんこ盛りでどこから手をつけていいのかわからないのですが、まず海の怪物!
結構可愛い!デザインがいい!
でもあんなのが海の中にいたら本当に嫌だ!でも可愛い!
水族館でガラス越しに眺めたい。
なんとも言えない愛くるしさ。食べたらいろんなご利益ありそう。
王様が死ぬとか下女まで孕むとかここから理不尽ワールドが全開なわけです。なぜなのか。なぜ蒸気を浴びたくらいでデキちゃうのか。
女王様、下女の間に生まれてきた子供はまるで双子のように瓜二つ。
そう、彼らは対の存在なのです。

 

そうこうしてるうちに隣の国ではとっつぁん坊やみたいな王様と困り顔の王女が暮らしており、年頃の王女は結婚したいわ〜!とお父ちゃんにお願いします。
お父ちゃんは無邪気にもほどがある変わり者で、自分の手を這いずっていたノミに自らの血を飲ませ飼育し始めます。
ノミはフシギにどんどん大きくなり、明らかにノミのサイズを逸脱していくのですが、犬くらいのサイズになったノミが、また可愛いの。
目がつぶらなの。
中途半端に愛らしい顔してるの。
なんなのこの映画に出てくるクリーチャーたちのデザインセンスは?????

そんな可愛いノミにお父ちゃんは餌をあげまくり、大変に可愛がって育てるのですがノミは病気にかかってあっさり死にます。死ぬ時もちょっと可愛かったのでなんかムカつきました。ノミのくせに。
大事に育てていたノミが死んでしまったこと、そして結局そのノミが一体何だったのかをお父ちゃんは知りたくてたまりません。
そこへまた王女が結婚したいよ〜!と言い出します。
そこでこの無邪気なおっさんは
「娘の婿候補にいっぱい人を集めて、あれが何だったのか当てさせよう!当てたヤツに娘を嫁がせれば一石二鳥!」
と、とんでもないことを企てるのですが、結果、嗅覚が異常に発達した鬼人がノミのことを言い当ててしまい、夢見る王女は鬼のもとへ嫁ぐ羽目に…


中略、王女は鬼のもとを脱出し、手助けしてくれた曲芸師の一家と共に過ごしているのですがまた鬼に襲撃され、一家は全滅。
王女は追い詰められ、危機一髪なのですが、鬼は一応は自分の嫁だと思っているのか王女を殺したりはしませんでした。
愛が芽生えたのか?王女も鬼に歩み寄ります。
そっと優しく鬼に触れ、ここに乗れと肩を差し出す鬼の背中に覆いかぶさり…
その刹那、持っていたナイフで鬼の喉笛を掻き切り、鬼は息絶えます。

この、
「嫌で仕方なくて逃げ出したけどやっぱりこの鬼の愛を受け入れて一緒に暮らすことを決意したのかな??」
って思った2秒後の華麗なる殺戮!
震えました。
ここまでの展開だけなら☆3かな〜とか思ってのんきに見てたけど、喉笛を切り裂いた瞬間に☆100だわ…!って思ったよね。
最高&最高。
やっぱりお姫様に鬼と暮らすのは無理だよね!ウンウン!綺麗事じゃなくてよかった!って心で叫んだ。
しかもその後、切り取った鬼の首を持って血まみれで自分の国に帰るんですけどその時のセリフがクソかっこいいの。これは是非劇場でお確かめ下さい。
おしっこチビるかと思いました。
無理やり嫁がされた相手の首を手土産に親に抗議できる女がこの現代社会にいるだろうか?いやいない…ていうか いてはいけない…。

 

お次は色情狂の王様と老婆の姉妹!
ババア姉とババア妹は城下町でつましく暮らしているんだけど、ババア姉の声だけはまるで若い娘のように美しく、その歌声はスケベジジイであるところの王様を思わず家に押しかけさせてしまいます。高価な贈り物つきで。
これに味をしめたババア姉は望まれるまま闇夜に王様に抱かれに行きますが、ろうそくの光で照らされババアだとバレてしまい、森に突き落とされ…通りかかった魔女の気まぐれで若返ります。理不尽AGAIN。
若さと美貌を取り戻した姉は王様と結婚し、ババアのままの妹を結婚式に招いて全てを打ち明けますが、妹は私も若くなりたい!一緒に暮らしたい!と駄々をこね、姉に疎まれます。「私は皮を一枚剥いだだけよ!」と比喩で妹に告げるも、若干頭がおかしくなった妹はそれを本当に実行してしまいます。
そう、牛や馬の皮をはぐ男に金品を差し出して自分の顔や手足の皮を剥がさせたのでした。
最後は皮を剥がれ血まみれになった老婆が豪華なドレスを着てフラフラと城までの石畳を歩いていくのですが、凄惨の一言。


美と若さになぜ人はこうも執着してしまうのか。
それは時に痛みや理性さえも凌駕する欲求なのでしょうか。
王女が生首持って登場したシーンの次にグっときた場面でした。

 

物語はクライマックスに向かい3つの王国の登場人物が勢揃いします。
欲に忠実で時に血まみれになることも厭わずそれぞれの生を全うする女たち。
幸せになったように見えてもそれは一時のことかもしれません。
一歩先はどうなっているかわからない、まるでサーカスの綱渡りのように…
そんな不安と高揚感がないまぜになった気持ちを存分に味わえる作品でした。

 

唐突に挟まれるレズシーン、老婆でも少女でも容赦のない全裸などかなり大人向けな映画であることは間違いないのですが、その他にも「サーカス」というモチーフが好きな人にもオススメできるかも。
ストーリーの最初から最後まで、まるで何かを暗喩するかのように繰り返し登場する曲芸師たち。
火吹き、ジャグラー、ナイフ使い、フリークス、そして綱渡り…中世ヨーロッパにはこんな曲芸師たちが本当にいて、諸国を旅しながら暮らしていたのかな、と想像を膨らませるのもまた楽し。
ある時は退屈している貴族を慰め、またある時は村の広場で民衆を沸かせる…そんな彼らの生活も物語のそこかしこに挟み込まれます。

そう、芸をすることこそが彼らの生活。
曲芸師の人生とは曲芸をすることにあり。
三つの王国の欲深き女たちの人生もまるで曲芸のように、人々を楽しませ、また同じように恐怖のどん底に叩き落す不思議な魅力に満ち満ちていたのでありましたとさ。

おわり。