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それでも、愛さずにはいられない/映画「恋とボルバキア」感想

小野さやか監督のドキュメンタリー作品「恋とボルバキア」をパートナーと見に行った。

 

映画『恋とボルバキア』公式サイト

 

思うことはたくさんあって、言葉にするのがとても難しい。 きちんと記事の体裁にしたいけど、まずは箇条書きでどんどん綴ってみたいと思う。

 

・みひろちゃん超かわいい
「恋とボルバキア」は女装男子とその周辺にスポットを当てたドキュメンタリー作品。作品内にはメインとなる登場人物が7人登場する。
印象的だった女装男子、みひろちゃんについて語りたい。
まず、可愛いの。マジで。
最初画面に登場した時、「ぱっと見女性にしか見えない」という語りとともにみひろちゃんが道端に立っていて(おそらく立たされていて)男性にナンパされまくってるシーンだったんだけど、その男性たちの気持ちが私にはわかりました。
かけたいのよ声。可愛いしエロい。すごく可愛い。
服のセンスがめちゃめちゃよくて、絶妙にエロくて可愛い服を着ている。
メイクもとっても上手。自分に似合うものを知ってる人だと思った。
そんなみひろちゃんは、恋をしている。相手は女装男子をテーマにした雑誌の編集者。彼女持ち。
彼女がいることを知りながらも恋心を止められないみひろちゃんが、ものすごくいじらしい。
愛おしいとすら思ってしまった。
「そんな男やめて私にしなよ!!絶対幸せにするから!!」
と抱きしめてあげたくなる。
まあみひろちゃんは私にそんなこと言われても何も感じないかと思いますが…
気持ちは止められない、親にもカミングアウトし、彼女がいるとわかっていても恋をしてしまう。
みひろちゃんがとても魅力的に映るのは、容姿だけでなくて彼女がとても素直に生きているからだと思った。自分の望むものを知っていて、それを欲しいと声に出して言える。でも、押し付けたりしない。優しさもある。
監督のアフタートークによると、その後みひろちゃんは別の人にも恋をしているとのことだったので、どうか彼女が楽しく幸せに生きていることを願うばかりだ。恋をして、今日も可愛い服を着ているのかな。素直な気持ちで生きているみひろちゃんの姿が、胸に刺さった。

 

・レズビアンカップルの役割分担
じゅりあんとはずみちゃんはカップル。じゅりあんは心も体も女性で、はずみちゃんは体が男に生まれてきてしまった。でも心は女の子。二人とも性自認が女だから、二人はレズビアンカップル。
それでもじゅりあんは「偽物レズビアン」と呼ばれるらしい。はずみちゃんが男として生まれてきたから?そんなの間違ってるだろ。ここに関しては、本当に怒りしかなかった。人の関係性を、ライフスタイルを、生き方を、偽物だなんて言う権利がどこの誰にある?心の底から腹がたったし、じゅりあんの気持ちを考えると涙が出た。
じゅりあんは子供が欲しい。でもはずみちゃんにそのつもりはない。女性ホルモンの治療もしていて精子が少なくなっているから、子供ができる可能性も低い。二人の気持ちはなかなか交わらない。平行線が続く。
はずみちゃんは女の子として扱われたい。そう思うとじゅりあんは、男みたいに振舞わなければいけないのかと思い悩む。はずみちゃんより背も低い、女性らしい見た目のじゅりあん。二人は愛し合っている、そしてお互いの役割を演じている。男役、女役、パートナーとはなんなんだろうか?
これはレズビアンカップルによく起こりがちな問題だ。
男性っぽい見た目の方が男っぽく振舞ったり、食事をおごったり、一緒に暮らしていたら生活費を負担したり。
もちろん二人の自由だから、それで心地よければいいけど、もし「そうしなければ」と思ってどちらかが「リードする側」を引き受けているなら、苦しいだろう。
私は、見た目やタチネコにかかわらず、お互いに支え合えるカップルがいい。甘えたり、甘えてもらったり、おごる時もあればおごられる時もある。マイノリティ(と世間から思われている)カップルなのだから、世間の規範からはぶっ飛んだ存在にりたい。なかなかそうはなれない彼女たちのどうにもならない不自由さを歯がゆく感じたけど、それでも一緒にいることを選び続けている二人に強さや深い愛情を感じた。本当に素敵なカップル。

 

・「願いは叶わない」それでも生きていくし、恋もする
映画のパンフレットには出演者のコメントが掲載されている。
そこに書かれていた
「「本当の願いは、叶わないよ。」だから、生きがいがある。そう思っています(井上魅夜)」
「この映画は”果たされない思い”を描いた作品だと思う。(蓮見はずみ)」
この二人のコメントがとても印象的に感じた。
女の子として生まれてきたかった。お父さんに愛されたかった。彼女がいる人を好きになってしまった。好きな人の子供が欲しい(でも無理)。
願いは叶わない、それでも日々は続くし、人のことを好きになる。愛してしまう。苦しくても、辛くても、愛することは多分やめられない。愛されたいと思うことを、止められない。
それは人として生まれたサガなのだろう。この作品に関わらず、今この世にある多くの創作物で語られていることで、口にするまでもないのかもしれない。愛さずにはいられない。愛してほしい。
ないものを欲しがって、どうにもならないことを嘆いて、人生は続く。


LGBTQに焦点を当てた映画だけど、本当のテーマは「ないものねだり」であり「愛すること・愛されること」なのかなと感じた。
恋をしている人、悩んでいる人、生きるのがしんどい人に見てもらいたい映画です。
おわり。