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自分の体をありのままに愛すること/ 【映画】ストリップダウン・ライズアップ 感想

心に傷を負った女性たちが、ポールダンスレッスンを通して自分の心の傷と向き合っていく過程にフォーカスしたドキュメンタリーを見ました。

 

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ポールダンスをテーマにしたり取り入れた映画がちょくちょく出てきているんですが、実は当のポールダンサーたちからはあまり評判がよろしくなくて…

例えば、ジェニファー・ロペスがベテランストリッパー役で出演した「ハスラーズ」なんですが、こちらは実在する有名ショークラブを貸し切って撮影。
するとそこでそれまで働いていたダンサー達は、撮影期間中、何の金銭的保証もなくクラブから締め出され、失業状態に。
ポールダンスやストリップをテーマに掲げるくせに、その文化を作り育ててきたダンサー達に平気で辛酸を舐めさせ、蔑ろにしたことで、欧米のポールダンサーやストリッパー達を中心にこの映画をボイコットしようというムーブメントも起こりました。

 

そしてこのストリップダウン・ライズアップに関しても同じような批判が起こっています。

映画の主軸は「Sファクター」というセラピー的ポールダンスレッスン。
そこに集うのは、自分をセクシーだと思えない、自分の体や見た目を愛せない、自分自身を好きになれず、性的なことに嫌悪がある…心に傷を負い、癒しを求めている女性達。
メイン講師でありスタジオオーナーのシーラの指導のもと、ポールダンスレッスンを通して彼女達の心の傷を、時に優しく、時にやや強引に開かせ、自分で自分を癒す術を学んでいく…というのがあらすじです。

ここで批判の的にさらされたのは、シーラの思うポールダンスと、ストリップ業界でポールダンスをし続けてメインストリームにのし上がった女性達との見解の相違にあるようです。

日本でもすでにその辺の意見の相違は出ていて、大会でも明確な違いがあるんですよねえ…ああややこしい…
セクシーさや芸術性を競うのならば「ミスポールダンスジャパン」「ポールシアタージャパン」
スポーツ性、競技性を重視しセクシーな部分を省いたものが「全日本ポールスポーツ選手権」
両者間には見えざる深い溝があり、見てる側からすると同じポールじゃん。と思っても大きな違いがあるんです。まあその違いについては長くなりますので割愛。

映画の中でシーラはポールダンスを、女性が自分の体を愛し、解放し、悲しみや不安を解き放つ手段として指導していきます。
「必ずしも性的な仕事と関係するわけではない」というシーラのポールダンスに対するスタンスは、前述の通り、全く日の目を浴びずにただ踊り続けてきた、偉大なる先人ストリッパー達へのリスペクトに欠けるという意見が多数出ているようです。

私もまだまだポールダンスがダーティーな仕事としか思われなかった時から踊っていたし、いろんな現場で踊ったから最近のあまりにも「健全な」イメージのポールダンスにはまあ違和感を感じるんですよね。
老若男女が楽しめるものであると同時に、その礎を築いてきたのは、やっぱりストリップダンサーなのであって、そこへのリスペクトを失いたくはないなと個人的には思います。

 

ただ、批判されているよりはマシだったなと思うのは、元ポルノ女優で現ポールダンススタジオオーナーの女性の意見や様子が取り上げられていたこと。
彼女は自分の経歴を隠しもしないし、そのことについてマイナスな思いはあっても、今の自分を力強く肯定しています。
ただね、確かにもうちょっとセックスワーカーのコメントとかあっても良かったのかもね。ジェニーン・バタフライがストリップバーで働いていたってのとかは良いコメントだった。主体が結局シーラのセラピー的レッスンとそこに来る女性達なので仕方ないのかなーとは思いますが。

こういうレッスンが日本にあってもいいのかもなあとも思った。
自分の体をありのままに愛したり、レイプされた心の傷をみんなに吐露して涙したり、誘導瞑想みたいに踊ったり、心も体も丸ごと受け入れられる癒しの場ってのが世の中もっと必要だな、と感じました。

おわり。